　その昔、「無名」という名の漫画同人がありました。もう 20 年以上も前のことです。元々、札幌で成立したこの同人誌集団が陽の当たる場所へ登場するのは 1975 年頃本部を東京近郊の浦安へ移した頃からであり、もちろんそれは、関係者がそれぞれ学生でなくなって行った時代と符合します。

　当時の同人の概要は総勢 50 名から 62 名前後、全国に点在する会員には会報を毎月発行し、生原稿作品を郵便で回覧するという方式で、長く続いてきました。年間の総会費収入は 54 万円、半期ごとの決算書を発行し運営のほとんどはボランティアとして活動した数人の人に支えられる結果になったのは致し方ないことでしたが、決算書を発行する最初の漫画同人として「無名」は位置ずけされる結果になりました。現在、そのまま漫画との関りを続けて、実質的な漫画作家して生きている人もいます。

　多くは漫画作家を目指してはいても、いろいろな事情で現在は他の職を持ち生きています。この HomePage はそれらの人々の再会の場として公開し、また当時の足跡を明示することでその集団の歴史を刻むものです。

　1970 年以降、「無名」は 3 冊の印刷された同人誌を発行しています。

最初の一冊は、札幌から発行されました。300 部という少ない部数でしたが、店頭には並ばず、関係者で処理されました。

　1978 年に浦安から発行した 1000 部の「無名」は、大半を札幌の書店、一部は東京の書店と長崎の書店の 3 箇所で販売、また Comic-Market でも販売されましたが、約 3 年で売却を完了しました。価格は 480 円、印刷経費は(株)大日本印刷内の印刷屋さんによって 32 万という破格の好意の上に、会員のボランティア活動の賜物でした。　当時 1000 部の自費出版された漫画同人誌が書店で販売された最初の出来事だったと記憶しています。Comic-Market の創世期であり、板橋近郊で発足したそれはまだ 3 回程度の開催回数だった頃です。

　最後の「無名」は題名を一新し「両性具有 80」という名前で出版されています。 1979 年のことだったと思います。この長い活動の末「無名」という同人誌はその基盤であるロビー活動の足場を失い、崩壊しました。　誰もが、結婚という人生の変化の上に自分の生きる道に准じたからでしょう。会員の平均年齢は 25 才に迫っていました。

　これらの Pages は上記の「無名」の足跡をいろいろな形で提示するものです。 Link を辿れば、当時の「無名」に触れることができるでしょう。それが何なのだと言われれば、それは何でもないものです。「無名」という漫画同人が存在したという証明のためにだけこれらの Pages は存在します。昔々・・・という逸話かもしれません。